完全室内飼いの猫の増加、近年の獣医学の進歩によって猫の平均寿命は確実に伸びています。高齢期を迎えた猫は、やはり何らかの腫瘍と診断されるケースも多くなってきています。猫の腫瘍に関して予備知識として知っておきたいことをまとめました。
そもそも腫瘍とはどのような病気なのか
正常な細胞は規則的に増殖を繰り返します。腫瘍とは、細胞が本来の規則に従わず増殖し異常な組織を形成したものをいいます。増殖の速度が速く他の部分に転移するものを悪性腫瘍、増殖が遅く転移せず命に関わるおそれの少ないものを良性腫瘍といいます。
腫瘍は、猫が年齢を重ねるほど発生しやすくなります。これは、高齢になれば気力・体力とともに抵抗力も衰え、また細胞も傷みやすくなるのが理由です。腫瘍ができる原因は、老化のほかに、発がん性の化学物質、紫外線、ウイルス、ホルモン、遺伝などが複雑に関係していると考えられます。
猫に発生することが多い腫瘍
猫のがん(悪性腫瘍)のなかで特に多く見られるのは、リンパ腫と乳がんです。リンパ腫は猫にもっともよく見られるがんです。乳腺腫瘍は避妊手術をしていないメスの猫にみられる腫瘍で、人間と同じように乳房にしこりができます。
猫に発生するがん(悪性腫瘍)には、主に次のものがあります。
体表(皮膚)にできる腫瘍(皮膚腫瘍)
- 乳腺腫瘍
- 肥満細胞腫(皮膚型)
- 扁平上皮がん
- ワクチン誘発性肉腫
- 耳垢腺腫・耳垢腺癌
猫の乳腺腫瘍の8割以上が悪性の乳がんとなるため注意が必要です。猫の乳がんは急速に増殖してリンパ節や肺に転移するうえに、手術による治癒率も高くありません。ただし避妊手術を受けることによって、乳腺腫瘍をかなりの確立で防げることがわかっています。将来子供を産ませる予定がないのであれば、なるべく若いうちに避妊手術を受けさせてあげてください。
猫の皮膚がんは、あまり多くは見られませんが、扁平上皮がんや肥満細胞腫などの悪性腫瘍には注意が必要です。。扁平上皮がんは白い猫に多くみられるがんで、紫外線が原因で発生すると考えられています。発症すると鼻や耳の皮膚に小さな潰瘍ができ、出血や悪臭を放つようになります。
肥満細胞腫は肥満細胞という細胞が腫瘍化する病気で発症部位によって内蔵型と皮膚型に分けられます。皮膚型を発症すると、おもに頭や首のまわりに腫瘤(しゅりゅう:コブのこと)ができます。
体内(臓器や口の中)にできる腫瘍
- 肥満細胞腫(内臓型)
- 胃がん
- 大腸がん
- 食道がん
骨にできるがん
- 骨髄性腫瘍
その他のがん
- リンパ腫
リンパ腫はリンパ球(白血球の一種)ががんに侵される病気です。発症してから、わずか1~2ヶ月で命を落とすこともあります。
飼い主にできること
腫瘍で大切なのは早期発見、早期治療です。毎日愛猫の全身をさわって、ボディチェックをしてあげましょう。体の表面や、口の中、耳、あご、乳腺部といった箇所に見慣れないシコリがないか、お腹に腫れがないかなどいつもと違った様子がないか見てあげてください。
また、下痢、血便、血尿、食欲不振、呼吸が苦しそう、口臭、口内の腫れなども腫瘍のサインです。異変があればすぐ動物病院に連れていってあげてください。
ただし実際のところ、毎日のボディチェックだけでは腫瘍の発見は難しいでしょう。やはり、動物病院での定期的な検査が必要です。