ケンカして猫が耳をかじられてしまった。たしかに猫は痛いでしょう。でも、この場合は言ってみれば「ケガ」の領域です。
中耳炎、その先の内耳炎となってくると「ケガ」では済まなくなってきます。これらは、猫の神経や脳に影響を及ぼす恐れがある怖い病気なのです。
耳の病気は猫に多く、そして侮れません。早め早めに動物病院に連れていって治療を受けさせてあげてください。
耳の構造
猫の中耳炎という病気を理解するために、まず耳がどのようなつくりになっているのかを見ていきましょう。
外耳
いわゆる「猫耳」と私たちがいっている、ヒラヒラした部分を耳介(じかい)といいます。
耳介から奥につながる道のことを耳道といい、突き当りには鼓膜があります。ここまでが外耳です。
外耳炎は耳道がダニに感染したり、異物によって刺激を受けたり、アレルギーをおこすことなどによって発症し、そこに細菌や真菌が感染することによってさらに悪化していきます。
中耳
鼓膜の奥には鼓室(こしつ)と呼ばれる空洞があります。鼓室は耳管で鼻の奥とつながっていて、気圧の調整をしています。
鼓膜には小さな耳小骨と呼ばれる骨がつながっています。耳小骨は鼓室の中で音による鼓膜の振動を増幅して、さらに奥の内耳に伝える働きをしています。
ここまでが「中耳」です。
内耳
内耳には脳に音を伝える働きと、平衡感覚をつかさどる2つの働きがあります。
音は耳小骨からの振動をカタツムリのようにぐるぐると渦を巻いた蝸牛(かぎゅう)という器官を通して聴神経(脳)に伝えられます。蝸牛の中はリンパ液で満たされていて、中には振動を神経信号に変える毛が並んで生えています。
また、三半規管と呼ばれる運動方向や重力を感知して平衡感覚をつかさどる器官も存在しています。ここまでが内耳です。
「字」で書くとどうしても説明口調になってしまいますが、頭で想像してみると本当に繊細で「命の神秘」を感じさせてくれるような構造ですね。
中耳炎とは?
中耳炎は、おもに外耳炎の悪化や慢性化により、鼓膜を破って中耳にまで炎症や感染が広がることが原因で起こります。中耳は耳管で鼻腔とつながっているため、蓄膿症など鼻の病気から中耳炎に発展してしまうこともあります。
また中耳は顔の筋肉をつかさどる顔面神経や、眼球領域の調整をつかさどる自律神経に隣接しているため、中耳で炎症が発生するとこうした周辺神経にも影響が波及する場合もあります。
外耳炎は頭をしきりに振ったり、後ろ足で掻いたりといったどちらかというとかゆみや違和感などの症状を示すことがほとんどですが、中耳炎・内耳炎になると、猫はジッとして痛みを訴えることが多くなります。
中耳炎の症状
- 頭を傾けたり、頭を振ったりといったしぐさ
- 痛みが強いため、元気がなくなったり、頭部を触られるのを嫌がったりする
- 発熱
- 平衡感覚が失われ頭を常に傾けて(斜頚)、歩き方が不自然になりよろけるようになる
- 顔面の神経麻痺や目の玉が自分の意思と関係なく上下や左右に揺れつづける眼振という症状
- ホルネル症候群(眼球が陥凹して瞬膜が飛び出して見えたり、まぶたが垂れ下がったりする症状が見られる病気)
耳の病気は放置厳禁
顔の周りは脳にも近く、たくさんの神経が集まっています。外耳炎は猫によく見られる病気ですが、だからといって放置してしまうと中耳・内耳に波及する危険があります。
そうなる動物病院での治療はとても大変なものになりますし、手術が必要になる場合も出てきます。後遺症が残ってしまう恐れもあります。
どんなときにも全ての病気は早期発見・早期治療が大切です。
【参考記事】当事者になったつもりで、読んでみてください。
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