結論から申し上げますと、基本的に猫にパンを与えてはいけません。というより、与える必要がないのです。
どうして、与える必要がないのか、詳しく説明していきますね。
パンを栄養として利用することができない
猫は元々、純粋な肉食動物です。
犬は雑食性なので穀物などの植物性の栄養を分解吸収できますが、 猫はそういった植物性の栄養素をほとんど利用する事ができません。利用できないだけでなく、小麦などの食物繊維が入っている食べ物を、大量に与えると胃腸や腎臓に負担がかかります。
パンの主な材料は小麦粉です。小麦は世界で主食として食べられている栄養的に優れた穀物です。豊富なデンプンを含みます。
犬用のパンの販売やレシピがあるのに、猫用のものが無いのは、猫は犬よりもデンプンの消化吸収能力が2.5倍も劣り、炭水化物(パンのメインの栄養素)は猫の体には不向きだとされているためです。
つまり「パンを与えてはいけない」というよりも、「パンを与える必要が無い」のです。
与える必要がないものを、「猫が欲しがるから」とか「猫が喜ぶから」といった安易な理由で与え続けるのは、かえって猫のためになりません。
猫は「甘さ」を感じない
猫の舌には、甘いものを感じるセンサーがないといわれています。
例えば甘いパンを与えても、猫が喜んでいるわけではないのです。不要なカロリー摂取は、飼い主が避けてあげるべきですね。
パンを与えすぎると、残りかすが口内に残りやすく歯周病の原因になります。甘いパンは糖尿病や虫歯の原因になります。
実際にあったパンによる究極の事故の例
パンはイースト(酵母)で、パン生地を発酵させて作られます。イーストの入っているパンは、消化管の中で膨らみ、ガスを発生させる場合があります。
これは実際にあった犬の事故の例です。
犬が喜ぶからという理由で、フランスパンを与え続けた人がいたそうです。フランスパンは普通の食パンと違って、ほとんど水分がなく、気泡のようなたくさんの穴が開いています。正味の量としてはそれほどの量ではないでしょう。
この人は犬が求めるのに任せて、フランスパンを一気に3本も与えしまったそうです。フランスパンを一気に3本も食べると、犬ものどが渇きます。食後に大量の水を飲んでしまいました。
粉々のフランスパンで満たされた胃袋に、今度は大量の水。水分を与えられた胃の中のフランスパンは、一気に膨張します。少しぐらいの量なら、問題ないでしょうが、長いフランスパン3本分の量です。
この犬が動かなくなるのに、そう時間はかかりませんでした。そして、動かなくなった犬は、二度と動くことは無かったそうです。
どんな食べ物にしろ、人間の食べ物を愛猫が「くれ!くれ!」と寄ってきても、この話を思い出して「駄目!」と毅然と拒否しようと思ったしだいです。
パンに「入っているもの」も危険
当然のことですが、パン自体ではなく、パンに入っているものにも注意が必要です。
特にチョコレートは危険です。猫に与えると中毒症状を起こし、量が多いと大げさではなく死亡することがあります。
レーズンを含んだパンも危険です。レーズンを与えすぎると、理由は定かではないものの、嘔吐、腎機能障害、最悪の場合は死亡することもあります。
ジャム、あんこ、クリームなどは、虫歯や肥満、糖尿病の原因になります。
繰り返しになりますが、与える必要がないものを、猫が欲しがるからといって安易に与えるのは、猫のためになりません。
参考>>ペットの治療費の事例集