猫がはげるほど体をなめてしまう。ストレスが原因と安易に決めつけるのは危険です。もっと具体的な原因が潜んでいるのかもしれません。
よく見られる2つの原因
この症状でよく見られる具体的な原因は、カビとアレルギーの2つです。この記事で対象としている患部(ハゲ)の部位は以下の場所です。
- お腹
- 頭
- 足
- 首
- 耳
- 耳の後ろ
- 口の周り
カビ(真菌症)
猫の顔のまわりや足に円形のハゲができるのは、典型的な真菌症(皮膚糸状菌症)の症状です。
真菌(しんきん)とはカビの一種です。イメージしやすいところでは、人の水虫やたむしも真菌です。この真菌が皮膚に感染して皮膚炎が起こる訳です。
円形に脱毛するのが特徴です。ふけが出たり、うすいカサブタができたりします。舐めたり掻いたりすると他の部分にも広がります。
カビの仲間なので高温多湿を好み、夏場は悪化しやすい傾向があります。どこにでもあるカビですが、やはり抵抗力が弱い子猫や老猫、免疫力が落ちている猫に症状が出やすいです。動物病院での長期の治療が必要になります。
アレルギー(好酸球性皮膚炎)
猫の背中、足、肉球、唇などにブツブツとした発疹が繰り返し出現し、かゆがって噛んだりしているうちに赤くただれてハゲてしまい、出血するまでになってしまうのが、好酸球性皮膚炎の症状です。
動物の血液の中で、白血球は様々な外敵から体を守っています。この白血球の中で、主に細菌やウィルスなどから体を守っているのが「好中球」と「リンパ球」と呼ばれ、主に寄生虫などから体を守っているのが「好酸球」と呼ばれます。好酸球は寄生虫を退治する以外に、アレルギー反応の起きている場所へ急行して対処する任務も担っています。
この好酸球がアレルギーに対して頑張り過ぎてしまった結果、本来は寄生虫などに対して使う武器を自分に向けてしまい、自分で自分の体を傷つける状態に陥っているのが好酸球性皮膚炎です。
考えられるアレルギー物質には次のようなものがあります。
治療法
真菌症の主な治療法は、塗り薬とシャンプーになります。イトリゾールなどの抗真菌薬(飲み薬)もあるのですが、副作用の心配があります。人の水虫と同じで、真菌症は治りにくい病気です。根気強い治療が必要です。
以下、実際の治療の例です。
- まず、患部の毛を剃って薬が浸透しやすい状態にします。
- そして塗り薬を1日2回ほど塗ります。ただしステロイドが入っている薬は塗り過ぎると症状が悪化する恐れがあるので、獣医師に指示された回数を厳守する必要があります。
- 並行して、真菌に効果があるシャンプーで(ノルバサンサージカルスクラブなど)で週2回ほどシャンプーします。
この飼い主の猫が治るまでに4ヶ月かかりました。
好酸球性皮膚炎の治療も、まずはアレルゲンの特定から始まり、薬剤(ステロイド、抗菌剤など)、ノミ予防、シャンプー療法、低アレルギー食の給餌など複合的な治療が必要になります。
いずれの場合も、素人考えで市販の薬などを用いるのは避けるべきです。安易に人間用の薬を使うなど論外です。動物病院で信頼できる獣医師の指示に従って治療を受けなければなりません。