野良猫を保護した場合など、外で暮らしていた猫は、ほぼ間違いなくノミやダニに寄生されています。動物病院に連れていって、駆除してもらうことが大切です。
ノミやダニの害は、単に猫の血を吸うだけではありません。血を吸うときに、自分の唾液を猫の皮膚に注入するのですが、この唾液の中にアレルギーの元になるものや、細菌やウイルスなどの病原体が潜んでいるのです。
このページでは、ノミやダニが原因で起こる病気や症状について詳しく見ていきます。
単にかゆいだけではない!
ノミやダニは想像以上に重い症状を引き起こす危険があります。猫がかゆい思いをするだけでは済まないこともあるのです。
ノミアレルギー性皮膚炎
私たち人間も含めて動物の体の中には、病原体など自分にとって害となるものを排除しようとする働きが備わっています。
体内に病原体やノミの唾液などの異物(抗原)が入ると、それを攻撃する物質(抗体)が作られ、体の外へ追い出そうとする反応が起きるのです。
このような働きを「免疫」と言います。
本来、体を守るはずの免疫が過剰に働き、有害な反応を起こしてしまうことがあります。これを「アレルギー」というわけです。
血を吸われるたときに、体内に注入されたノミの唾液に対して過剰な免疫反応が起こり、それが原因でひどい皮膚炎を起こしてしまうのがノミアレルギー性皮膚炎です。
皮膚に発疹が見られ、毛が抜け、激しいかゆみがあります。猫はかゆみを我慢することができません。そのままにしておくと、口で噛んだり後足でひっかいたりしてしまいます。
その結果、脱毛し、皮膚の表面に傷を作り、そこから細菌感染をおこして、更に悪化させるという悪循環に陥ってしまいます。
ダニによる皮膚炎
ダニの口には「ネジの頭」のような形のとげがついていて、一度皮膚に差し込むとなかなか抜けないようになっています。ですから、食いついているダニをむやみに取ろうとすると、口の一部が皮膚の中に残ってしまい、皮膚炎の原因となってしまうのです。
ダニに噛まれた箇所はとてもかゆく、猫は激しくかきむしってしまい酷い皮膚炎になってしまうことがあります。
瓜実条虫症(サナダムシ)
ノミが条虫という寄生虫の卵を食べると、ノミの体の中で成長していきます。そして猫が毛づくろいするときに、このノミを一緒に飲み込んでしまうと、消化管のなかで条虫は全長50センチにも成長してしまうのです。
下痢や嘔吐、なかなか太れない、といった症状が現れます。感染している場合、便の中に条虫がちぎれて米粒のような形で出てくることがあります。
猫ヘモバルトネラ症
ノミやダニの被害で本当に恐ろしいのは、それらが「様々な病気の運び屋になっている」ということです。
ノミやダニの唾液の中には、さまざまな病原体が混入していて、血を吸うことで動物から動物へ、また動物から人へ運んでいるのです。
猫にとって特に恐ろしい感染症は猫ヘモバルトネラ症です。マイコプラズマ・ヘモフェリスという病原体が、ダニやノミを介して猫に感染します。
この病気になった猫は、血液中の赤血球が破壊されて貧血となり、症状が悪化すれば亡くなってしまうことがあります。
人にうつる場合もある
ノミやダニが原因となる、皮膚炎や感染症は動物だけでなく人にうつる場合もあります。
例えば、「猫引っ掻き病」と呼ばれる病気は、病原体を持っているノミの糞が猫の爪についていて、その爪で人が引っ掻かれることによって起こります。病名とは裏腹に発熱、疼痛、リンパ節の酷い腫れなど重い症状に見舞われます。
ライム病、日本紅斑熱、Q熱といった、ノミやダニが媒介して人が発病する、深刻な感染症も存在します。
猫についたノミやダニを退治しようとして、自己判断で市販の薬などを使うと、かえって症状を重くしてしまう危険があります。
必ず動物病院に連れていって駆除してもらってください。
>>「猫のノミ・ダニ駆除の決定版!フロントラインプラス」
【参考記事】当事者になったつもりで、読んでみてください。
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