肥満細胞腫は猫に多く見られる腫瘍です。
名前だけを聞くと「太り過ぎたせい?」とか「脂肪のかたまり?」とか思ってしまいますが、いわゆる「肥満」とは無関係。
それではいったいどんな腫瘍なのでしょうか?
そもそも肥満細胞とは?
肥満細胞とは一言でいうと、体に異物が侵入したときにアレルギー反応を引き起こすきっかけを作る細胞です。
私たちの体には(もちろん猫も)、細菌やウイルスなどの病原体が入ってきたとき、それらを除いて体を守る免疫という働きがあります。
ところが、この免疫が食べ物や花粉などに過剰に反応してしまい炎症を起こすことがあります。これがアレルギー反応です。
アレルギー発症のメカニズムに関わる肥満細胞は、体の防御に大切な役割を持っている訳です。名前は肥満細胞ですが、「肥満」とはなんの関係もありません。
細胞自体の形が丸いから、こう呼ばれているようです。肥満細胞は粘膜や皮膚、体のあちこちに数多く存在しています。
肥満細胞腫は2種類ある
肥満細胞腫は、肥満細胞が急激に増殖して腫瘍化することで起こる病気です。皮膚にできるタイプと内臓にできるタイプの2種類があります。
皮膚型肥満細胞腫
皮膚型肥満細胞腫は、頭部や首のまわりによく起こりますが、他の部位に見られることもあります。脱毛をともなう小さな硬いしこりが1個だけポツッとできたり、体のあちこちに複数できたりします。
猫の皮膚型肥満細胞腫は良性の割合が高いと言われています。しかし、例えば眼のふちの2~3㎜程度のできものが、眼だけでなく顔を覆うほどの大きさに成長したり、他の臓器に転移することも稀にですが起こります。100%良性とは言えない訳です。
現在、肥満細胞腫の第一の治療法は、やはり摘出手術ということになります。また手術で取った細胞を病理組織検査に出して調べてみないと、良性か悪性かがハッキリしないのです。
摘出手術の場合は、腫瘍の細胞をできるだけ残さないように、一回り大きく切除します。大きくなった腫瘍を取ると縫合できなくなってしまいますから、取るのならできるだけ小さいうちにということになります。
手術することで、猫の顔の表情が変わったり、耳が無くなってしまったりという場合もあります。高齢猫の場合は体力の問題もあります。
猫にとって一番良い方法を、信頼できる獣医師のもとで選んであげたいものです。
内蔵型肥満細胞腫
内臓型肥満細胞腫は、おもに脾臓や肝臓、小腸に発症し、悪性のものが多いとされています。やはり内臓にできた腫瘍を外科手術で摘出するのが一般的です。その上で抗がん剤治療や緩和治療などを組み合わせていくという流れです。
QOLという言葉があります。クオリティ・オブ・ライフの略で「生活の質」という意味ですね。医療の場面では、病気や障害を持ちながら、どれだけの生活の質を保つことができるか、という意味で使われます。
たとえ「完治」が難しくても、信頼できる獣医師のもとでQOLを維持しながら、猫に少しでも心やすらかに生活させてあげたいものです。
ペット保険に入っていると・・・
猫がいざ肥満細胞腫のような病気になったとき、それが軽度であっても重度であっても、飼い主一人では何もしてあげられません。動物病院に連れていって、少しでも猫にとって良い治療を受けさせてあげたいですよね。
そんなとき心配なのは、やっぱりお金のこと。
ペット保険に加入していると、お金の面で気持ちがグッと楽になりますよ。「治療費の8割は負担してもらえる」と思うと、これは全然違いますよね!