実際にあった話です。猫が頻繁に顔を洗っている。飼い主は「キレイ好きなんだな」と微笑ましく思って、そのままにしていたら、実は・・・
顔を洗うのは野生時代の名残
猫が顔を洗うのは、野生時代に狩りをしていたころの名残です。
顔を洗うとき、まず最初にすることは、舌を出して口のまわりをペロペロ舌なめずり。食事がおいしかったから舌なめずりしているのではなく、舌で口のまわりについた食べ物のカスやニオイをぬぐい取っているのです。
次にヒゲの汚れを取ります。前足をなめて濡らしてヒゲを何度もこすってキレイにします。猫にとってヒゲは「高感度センサー」。顔の周囲にあるものとの距離や幅、あるいは風向きまでヒゲを使って瞬時に判断しているのです。獲物を猛スピードで追って、狭い場所をくぐり抜けられるのも、このセンサーのおかげ。ヒゲが汚れていては、狩りに支障が出てしまいます。
ヒゲが終われば、顔全体です。なめて濡らした前足で何度も何度もこすります。この「顔を洗う」しぐさは、猫らしくて本当に可愛いですよね。
顔を洗う本当の目的
猫は完全肉食動物。捕まえたネズミや小鳥をそのまま丸ごと食べてしまいます。腹を食いちぎり、内臓を食いちぎり食べるわけです。本来、野生の猫はそうやって生きていました。
血で汚れた自分の体をそのままにしておけば、血のニオイを漂わせていることになってしまいます。獲物のネズミや小鳥が危険を感じて逃げてしまう。
猫が顔を洗うのは、食べた獲物のニオイをできるだけ早く、そして完璧に消し去ること。これが一番の目的です。もちろん血のニオイで、自分の存在を敵に悟られないようにする防衛本能でもあります。可愛いしぐさとは裏腹に、厳しい自然の中で生き抜く知恵の一つだったのですね。
他にも、皮膚に刺激を与えて代謝機能を高めようとする健康上の理由や、顔を洗うことによってストレスを紛らわせるという精神的な理由もあります。
顔を洗いすぎるときは要注意
猫があまりにも頻繁に顔を洗っていたら、もしかしたら上記以外の意味があるのかもしれません。
例えば、目にかゆみがある場合。飼い主は「キレイ好きなんだな」と、猫の個性だと思っていたのですが、実は結膜炎にかかっていた、というケースもあります。
結膜炎は、ウイルスや細菌への感染、アレルギー反応、外傷、寄生虫などが原因で、目の結膜が炎症を起こす病気です。目にかゆみが出るため、まるで顔を洗うように前足で目をこするしぐさを頻繁に見せることがあります。
少しでもまぶたが腫れているようなら動物病院に連れて行ってあげてください。早めに処置するほど、早く治ります。
【豆知識】「猫が顔を洗うと雨が降る」の由来
「猫が顔を洗うと雨が降る」とよく言われます。ご存知でした?(笑い)これには科学的根拠があります。
前述しましたように、猫のヒゲは優秀な「高感度センサー」の役割を果たしています。
- 辺り周辺の障害物を感知することができる。
- 風の向きを確かめることができる。
- 湿度の変化を感じ取ることができる。
野生時代は街灯などありません。夜はそれこそ真っ暗。そういう状況の中で獲物を捕ったり、危険を感知したりするために極限までセンサーの感度を高めていたのでしょう。
一般的に雨雲が近づくと、湿度が高くなります。湿度が高くなれば、湿度に敏感なひげが湿気によって重くなり、垂れてきます。垂れてきたひげが気になり、猫が前足で顔を洗う、という流れですね。(笑)
それにしても、猫が顔を洗うしぐさは本当に可愛いですよね。