伝染病予防に年に一度のワクチン接種は欠かせません。しかし、体力が低下している老猫の場合は、これまで行ってきたワクチン接種が危険を伴う場合もあります。猫が高齢で健康に不安があることを事前にしっかり獣医師に伝えて相談することが大切です。
そもそもワクチンとは何か?
ワクチンとは、一言でいえば毒性を弱められたウイルス(病原菌)のことです。猫の体内に予めワクチンを入れることで、猫自身がウイルスを無害にする免疫抗体を作り出すのです。
少し用語の解説をしますね。
「免疫」とは体に侵入してきたものと戦う仕組みのことです。免疫の一つに抗体があります。
「抗体」は「抗原」と結合してそれを不活性化したりできる「特殊兵器」です。「抗原」は体に侵入しようとしたり、悪さをしようとする物質やウイルスなどのことです。
つまり「抗原(ウイルス)」という敵を「免疫抗体」という特殊兵器で、体に入り込んだり悪さをする前にやっつけるという図式になります。この「免疫抗体」を作り出すためにワクチンを接種する必要がある、ということなのですね。
ワクチン接種によって予防できる伝染病
現在、日本でワクチン接種によって予防できる伝染病は次の5つです。
- 【猫ウイルス性鼻気管炎(ヘルペスウイルス感染症)】感染猫のくしゃみなどで飛び散った唾液や鼻水から感染。発熱、くしゃみ、鼻水、目やになどの症状。
- 【猫カリシウイルス感染症】初期症状は猫ウイルス性鼻気管炎と似ている。進行すると急性の肺炎から最悪の場合しに至ることも。
- 【猫伝染性腸炎(猫汎白血球減少症)】腸に炎症が起きて、白血球が急激に減少。発熱、嘔吐、激しい下痢など。
- 【猫白血病ウイルス感染症】唾液、ケンカの傷、母胎感染。発病すると回復は望めない。
- 【クラミジア感染症】激しい結膜炎、くしゃみ、鼻水、咳など。
ワクチンの効果は1年です。ですから年に一度のワクチン接種で上記の病気を高い確率で予防できます。
完全室内飼いの猫でも接種は必要です。通院時、来客時、飼い主が外出先から持ちかえる等々、ウイルス感染の危険は常にあるからです。
ワクチン接種の危険性について
老猫は病気に対する抵抗力が衰えています。ですからワクチン接種でしっかり伝染病を予防したいところではあります。
しかし、老猫にとってワクチン接種が危険を伴う場合もあります。毒性を弱められているとはいえ、ワクチンはウイルスそのものです。弱っている猫に接種すれば、免疫抗体を作り出す作用よりもウイルスの作用が強く出てしまって、体調を崩すこともありえるのです。
猫が年を取って体力に衰えを感じたら、これまで行ってきたワクチン接種にも注意が必要です。接種前、接種後、動物病院で信頼できる獣医さんの指導を受けるようにしましょう。