猫エイズの正式な病名は、猫免疫不全ウィルス感染症と言います。FIV(ネコ免疫不全ウイルス)というウイルスに感染することにより引き起こされる諸症状を指します。
生物は自分を外の世界から守るために「免疫」という機能を持っています。FIV感染後に症状が進行すると、この免疫機能が徐々に破壊されていきます。 免疫の働きが低下している時は、健康な状態では感染しないような病原性の弱い微生物に感染し重い症状が出てしまったりします(日和見感染)。
その結果、口内炎や鼻水、貧血、くしゃみ、下痢、微熱、リンパ腫瘍などの悪性腫瘍など、さまざまな症状が現れ、最終的に死に至る病気です。
猫エイズの経過と症状
猫エイズという病気は「感染」から「発症」までに4つのステージがあります。
感染
FIV感染猫との喧嘩による咬み合い等の結果、感染。
第1ステージ
急性期と呼ばれます。FIVウイルスと猫の免疫が激しく闘う時期にあたります。風邪を引いたり下痢をしたり、リンパ節が腫れるなどの症状が見られるようになります。
第2ステージ
無症状キャリア期と呼ばれます。一見すると健康な猫と何ら変わらなく見えます。
急性期を過ぎるとFIVウイルスはいったん攻撃をやめて、猫体内のリンパ球の中に潜んでしまいます。ですから、まるで病気が治ってしまったかのように元気な状態が続くのです。
しかしそれはあくまでも表面的なものです。この無症状キャリア期の間も、FIVウイルスは猫の免疫機能を奪いながら病気を進行させています。
第3ステージ
エイズ関連症候群といわれるエイズ発病前の症状が出る時期です。
エイズ関連症候群はエイズそのものとは区別されています。すなわち適切な治療さえ施せば治療は可能ですし、それが直ちに生命に関わることはありません。
次のような症状が見られ、徐々にそれらの症状が重くなっていきます。
- 慢性的な口内炎
- 皮膚炎
- 下痢
- リンパの腫れ
- 食欲不振
- 急激な体重の減少
第4ステージ(発症)
残念ながら終末期となります。 免疫不全症候群、いわゆる猫エイズ(猫後天性免疫不全症候群)を発症します。猫の免疫機能がほぼ破壊されてしまう状態です。
特に顕著なのが口内炎や歯周病などの症状です。食事が摂れなくなり、体のいろいろな器官がやられてしまいます。貧血が激しくなり、体重が落ち、日和見感染や悪性腫瘍が出るようになり亡くなってしまいます。
飼い主に知って頂きたいこと
猫エイズはいったん感染してしまうと、残念ながら完治を望むことができない病気です。FIVウイルス自体を攻撃してやっつけるといった根本的な治療方法が現段階では無いためです。
しかしFIVウイルスに感染したすべての猫が、エイズを発症するというわけではありません。猫エイズの発症とは第4ステージ、すなわち猫後天性免疫不全症候群に陥った状態のことを指します。
実際に感染してから発症するまでには4~5年、もしくは10年以上という長い期間がかかるのです。第2ステージ(無症状キャリア期)と第3ステージ(エイズ関連症候群が現れている時期)は私達飼い主の猫への接し方次第でかなり長くその時期を伸ばしてあげることができます。
また第4ステージに至り、発症してしまったとしても、その時々の症状に合わせた適切な治療さえ行っていくことができれば、十分に延命を図ることができる病気です。
猫がストレスを感じることなく、安心して暮らせる環境を用意してあげることを心がけてあげてください。どうか、猫エイズだからと偏見を持たないで愛情を持って接してあげてください。 次回は猫エイズに対する誤解、偏見について書いていきます。