ワクチン接種後の副作用として、打った場所にしこりができる場合があります。そのまま放置しておくと、ごく稀にではありますが肉腫(ガン)に変化してしまう場合もあります。大事になってしまわないように、飼い主が正しい知識を持ってよく気を付けてあげましょう。
ワクチンを打った場所にしこりができてしまう
ワクチン接種後に副作用として、ワクチンを打った場所しこりができる場合があるという知識を飼い主が持っていることが大切です。
この場合は、ワクチンを打った場所が炎症を起こして腫れあがった状態になります。しこり、あるいは腫瘤(しゅりゅう=こぶ状の盛り上がり)といった呼ばれ方をします。正式な呼び名は炎症性肉芽腫(えんしょうせいにくがしゅ)、あるいはワクチン接種部位肉腫と言います。
原因の1つとして不活化ワクチンに含まれる添加剤(アジュバント)が挙げられます。(後の章で詳述します。)
飼い主が愛猫にしてあげられる対処法は、まず接種後にワクチンを打った場所にしこりができていないか、よく確認してあげることです。2~3週間経ってもしこりが小さくならなければ、すぐ獣医師に相談しましょう。
ごく稀にですが肉腫(ガン)に変化することがあります。くれぐれも、「腫瘍になるまで放置してしまう」ということがないよう愛猫のために気を付けてあげましょう。
ワクチンを「打つ場所」についての知識
そもそも猫には、ワクチン接種に限らず、薬や栄養剤を注射されるとその場所にしこりができやすい、という特性があります。
以前は「猫が舐めにくい場所だから」という理由で、肩甲骨の間に注射をすることが多くありました。しかし、肩甲骨の間にはほとんど筋肉が無いので、しこりができた場合深くまで入り込んでしまい、完全な摘出手術ができません。ですから、猫に注射を打つ場合は肩甲骨の間以外の、皮膚の下に薄い筋肉がある場所が良いのです。
また、同じ箇所に注射するとしこりができやすいという傾向があります。飼い主は、注射を打つ場所がなるべく重ならないよう、前回のワクチン注射を体のどの部位に打ったかを記憶・記録しておくようにします。
以上のような知識を飼い主が持った上で、担当の獣医師からワクチンを「打つ場所」についての説明を受けてください。
不活化ワクチンに含まれる添加剤(アジュバント)について
しこりの原因として、不活化ワクチンに含まれる添加剤(アジュバント)がよく挙げられます。このアジュバントについて理解するためには、ワクチンの種類について知らなければなりません。
ワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」という種類があります。
生ワクチン
生ワクチンは、生きた病原体(ウイルス)の毒性を弱めたものを接種することによって、その伝染病にかかった場合と同じように抵抗力(免疫)をつけようとするものです。
生ワクチンは弱毒化されているとはいえ、生きている病原体そのものですので体内に入ると増殖していきます。ですから接種する病原体自体の量は少なくて済むというメリットがあります。
ただし病原体そのものを体力が無い猫に打つ場合、「リスク」というデメリットもある訳です。
不活化ワクチン
一方、不活化ワクチンは、病原体を殺して毒性をなくし、抵抗力(免疫)をつけるのに必要な成分を取り出してワクチン化したものです。不活化ワクチンは体内で増殖しません。
ただし生ワクチンに比べるとたくさんの病原体を体内に入れなければならないし、1回の接種では確実に免疫をつけることができないので2回接種が基本となっています。
また不活化ワクチンには、より効果的に体内に広く行き渡らせ、免疫効果を上げるための添加剤(アジュバント)が含まれていて、これがワクチン接種後に副作用としてしこりができる大きな原因だといわれているのです。
生ワクチンを選ぶか不活化ワクチンを選ぶかは、飼い主には選択できない場合もあるとは思いますが、獣医師の見解を聞いて理解した上で接種することが大切だと思います。