尿結石などに代表されるF.L.U.T.D(猫の下部尿路疾患)は、動物病院に来院する猫に見られる病気の中で3番目に多いのだそうです。また、ペット保険に入っていないと治療費がたいへん高額になることでも知られています。
このF.L.U.T.Dを予防・ケアするのがpHコントロール系のキャットフードになります。
pHとは?
pHとは、水溶液(物質を水に溶かした液)の性質をあらわすひとつの単位です。読み方は「ピーエイチ」、または「ペーハー」になります。
水溶液には酸性とアルカリ性という性質の名前があります。例えばレモンのしぼり汁をなめてみると「すっぱい」味がします。また、石けん水はヌルヌルしてなめると少し「にがい」味がするはずです。
レモンのしぼり汁は酸性、石けん水はアルカリ性です。中性は、酸性とアルカリ性のちょうど中間の性質です。
度合い(強さ)を表すpH
酸性・アルカリ性には、弱いとか強いとかいう度合い(強さ)があります。この度合いを表すのにpHが使われる訳です。
pHは酸性からアルカリ性の間に0~14の目盛りをつけて、酸・アルカリの度合いをその目盛りの数字で表すもので、 pH7を中性とし、それ未満を酸性、それより大きければアルカリ性としています。
pH7よりも値が小さければ小さいほど酸性の性質が強く、値が大きければ大きいほどアルカリ性の性質が強いことになります。
pHコントロールキャットフードの役割
pHコントロールキャットフードの役割を一言で表すと、F.L.U.T.D(猫の下部尿路疾患)の予防・ケアとういうことになります。
F.L.U.T.D(猫の下部尿路疾患)とは、尿結石・血尿・頻繁で痛みを伴う排尿・尿道閉塞など様々な症状を引き起こす症候群の総称です。
猫の尿結石では、おもにマグネシウム由来のストルバイト結石と、カルシウム由来のシュウ酸カルシウム結石があります。
成猫期(1~6、7歳)にはマグネシウム由来のストルバイト結石が多く、高齢期、老齢期にはカルシウム由来のシュウ酸カルシウム結石が多くなることが分かっています。
それぞれの猫のpHに合わせたケアが必要
成猫期に多いストルバイト結石は、尿のpHがアルカリ性に傾くと結晶化を起こし、逆に酸性に傾くと結晶は溶解します。ですから、成猫期では尿のpHを酸性寄りになるように配慮する必要があります。
一方、高齢期、老齢期に多いシュウ酸カルシウム結石は、尿のpHが酸性に傾くと結晶化を起こします。したがって、高齢期、老齢期では、尿のpHをアルカリ性寄りになるように配慮する必要がある訳です。
以上のことからF.L.U.T.D.に対しては、猫のそれぞれの成長段階やライフステージに合わせたケアが必要となってくることが分かります。
与える場合の注意点
pHコントロール系のキャットフードの中でも高いシェアを誇っているのがロイヤルカナンです。ロイヤルカナンのpHコントロールシリーズは尿のpHを酸性に傾ける効果があります。
アルカリ尿は細菌の繁殖を促進しますし、ストラバイト結石もできやすくなります。それに対して酸性尿は細菌が繁殖しづらくなりますし、できたストラバイト結石を溶解する作用もあります。
ストラバイト結石がある場合や細菌由来の膀胱炎などの場合、尿のpHがアルカリ性を示すことが多いので、ロイヤルカナンのpHコントロールシリーズは、これを猫にとっての適正値(弱酸性)に戻すために利用されています。
しかし、すでに適正値で安定している猫に継続して食べさせれば、尿のpHの酸性度が高まりすぎることになります。酸性度が高すぎると今度はシュウ酸カルシウム結石のリスクが出てしまいます。
このようにpHコントロール系のキャットフードは、あくまでも「療法食」だということを理解しなければいけません。個人の判断で、与えたり、与え続けたりするフードではないのです。
動物病院で診察を受けて、獣医師の指導のもとで与えなければなりません。