福島第一原発の汚染水問題の騒ぎが気になってしまい水道水を飲む気になれず、市販のミネラルウォーターを買って、自分で飲んだり猫に与えたりしている女性の飼い主がいらっしゃいます。
あるとき水道に取り付けるタイプの加湿器に、軽い気持ちでミネラルウォーターを入れてみたところ、見事に結晶ができてしまいビックリ!
「おいしくて安全、体にも良い」と言われるミネラルウォーターですが、猫に与えても大丈夫なのでしょうか?
そもそもミネラルウォーターとは?
ミネラルウォーターは「飲料水のうち、地下水や湧き水などの自然にある水を原水とするもの」と定義されています。自然界で岩石に接し、その岩石に含まれていたミネラルが溶け込んでいるんですね。
ミネラルウォーターに含まれるミネラルは、主にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムの4種類。これらのミネラルは体に取り込まれると様々な働きをして、私たちの健康バランスを整えてくれます。
例えば次のように働く訳です。
- 丈夫な歯や骨をつくる
- 代謝を助ける
- 筋肉の働きを助ける
- 肉体疲労の回復
- 心臓を正常に働かせる
- 脳の活性化
- 精神を安定させる
運動のあとの水分補給に適しているとか、むくみや便秘を解消するとか、ダイエットや美容に効果があるなどと言われるのは、こういった理由があるからなんですね。
どうして「おいしい」のか?
おいしさを謳ったミネラルウォーターも多いですよね。水の味は硬度が影響します。
硬度とは、水1リットルに溶け込んだカルシウムとマグネシウムの含有量のことです。含有量が多いと硬水、逆に少ないと軟水と言います。
カルシウムには主に甘味、マグネシウムには苦味があります。ミネラルの少ない軟水はまろやかでさわやか。一方、硬水は苦味や重み(鉄臭さ)を感じると言われています。
軟水には例えば、コカコーラから出ている「森の水だより」や「い・ろ・は・す」、「クリスタルカイザー」、「サントリー天然水南アルプス」、「サントリー天然水奥大山」といったものがります。
硬水で人気があるものには、伊藤園の「エビアン」などがあります。さらに硬度の高い「超硬水」という水を好む人もいます。おいしさの好みは人それぞれということですね。
ミネラルウォーターを猫に与えるのは良くない?
すべてのミネラルウォーターが猫に良くない、という訳ではありません。しかし硬度が高いミネラルウォーターは危険です。
理由は尿路結石ができるリスクが高くなるからです。猫にできやすい尿路結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の2つ。
尿中にマグネシウムが増えるとストルバイト結石が、カルシウムが増えるとシュウ酸カルシウム結石ができやすくなるのです。
またマグネシウムは、人が服用する便秘薬にも用いられています。人には問題ない量でも、体が小さい猫が摂取すると、下痢を起こしてしまうことがあります。
ですから、硬度が高いミネラルウォーターを猫に与えるべきではありません。飼い主がエビアンが好きで、なんとなく猫にもあげていた、なんてことがないようにしなければなりませんね。
尿路結石の原因はミネラルだけではない
ミネラルウォーターに含まれるミネラル分が、結石を作ってしまう一因になるのは確かです。しかしそれだけが原因ではありません。
飲水量が少なかったり運動不足だったり、肥満やトイレが汚いといったことも原因になります。
尿路結石の一番の予防策は、猫に新鮮な水を充分に飲ませるように工夫することです。これは尿となる水分量が減ってしまって、尿の濃度が濃くなるのを避けるためです。
十分な水分量の尿をコンスタントに排泄することができれば、結石の原因になる物質が結晶化する前に尿となって出ていきます。
オシッコの回数が少なければ、その分結晶が尿管にとどまる時間が長くなりますし、濃度が濃ければ結晶が大きくなる確率も高くなる訳です。
余談ですが・・・
私の友人が飼っている猫は、尿路結石の手術に20万円以上かかりました。その話を聞いて私はペット保険に入りました。
【追記】日本の水道水は安全
日本では水道水の安全性が厳しく管理されているため、そのままで安心して飲むことができます。水道水は塩素によって消毒されていて、雑菌が増えにくいメリットがあります。
猫に水をあげるときはどうしても置き水になってしまいますから、特に夏場にこまめに水を交換できないような場合でも少しは安心ですね。
とはいえ、水道水特有のカルキ臭さや、水道管を通るうちに含まれてしまう不純物が気になって、自分で飲んだり猫に与えたりするのに抵抗を感じる方もいるかもしれません。
そういう方には、水道水を沸騰させる方法がおすすめです。沸騰させることで、カルキ臭さの原因である塩素を蒸発させて飛ばすことができます。
やかんで煮沸する場合は、5分から10分ほど弱火で沸騰させます。この時に大切なのは、やかんのフタを開けた状態で煮沸することです。そうすることで、塩素だけでなく不純物も除去することができます。
このようにして沸騰させた水道水を冷やして飲むと、カルキ臭さを除去できるだけでなく、より一層おいしいと感じるようになります。
ただし水道水を沸騰させると、塩素の消毒効果がなくなってしまいます。雑菌が繁殖しやすくなりますから、ずっと置いておくのは危険です。早めに飲んでしまうことが大切です。