自宅での猫の出産。
- 陣痛が始まって数時間も経つのに産まれてこない。
- 1匹目が産まれたあと、何時間たっても次の子が産まれてこない。
- 母猫が苦しそう。
「無事に産まれてきて!」という飼い主の願いに反して、難産のケースもやはりあります。
出産は自然に任せるのが一番。確かにそうでしょう。しかし万一、難産だった場合に備えて、事前に動物病院と連絡を密にしておくことは、とても大切なことです。
出産の流れ
まずは通常の出産の流れを知っておきましょう。次の4期に区分されます。
猫は「多胎動物」と言って、一度に複数の胎子を産む動物であるため、第一子の出産が、第二子出産のための子宮収縮を促すようになっています。
陣痛期
子宮収縮に伴う痛み(陣痛)が大きくなる時期のこと。この時期に顕著になるメス猫の行動は
- 苦しそうに口で息をする。
- しきりに自分の股間を舐める。
- 床や巣を掘り返すような行動を見せる。(営巣行動)
- グルグル歩き回る。
- 転がったり、体を床に擦りつけたりする。
などです。
健全なメス猫の場合、膣から透明でネバネバした粘液を分泌するようになります。これが暗緑色や茶色の液体、あるいは悪臭を伴った黄色い分泌物を排泄する場合は異常が考えられます。細菌感染や流産の可能性がありますので、獣医師の診察が必要です。ただし、第一子を出産した後の緑色がかった液体は、正常の範囲内ですので、これは区別します。
開口期
収縮した子宮によって胎子が産道を通過し、膣の開口部で一時的に止まる時期のことです。
通常、子宮収縮によって、胎子を包んでいる羊膜が自然と破れます。これを破水と言います。破れない場合は母猫がなめることで破ります。羊膜が破れると、今度は中から出てきた羊水や新生子をなめはじめます。
産出期
膣口にとどまっていた胎子を外に娩出(べんしゅつ)する時期です。
普通、15~30分間隔で次々と胎子の産出を行い、合計1~2時間かかります。猫の場合、およそ70%の胎子が頭から出てきて、残りの30%が尾から出てくる(逆子)と言われます。母猫は新生子の鼻先をなめることで呼吸を促し、へその緒を1/3くらいのところで噛み切ります。
後産期
胎盤が産道から娩出される時期のことです。外に出てきた胎盤組織は多くの場合母猫が食べてしまいます。無理に止めようとせず自然に任せたほうがよいようです。
産まれてきた子猫の数と胎盤の数が合わない場合は、母猫の体内に胎盤が残っている可能性があります。これは子宮感染の原因になるので獣医師に相談してください。
難産が疑われるとき
次のような場合は、難産が疑われます。
- 2時間以上も強い本格的な陣痛が続いているのに胎児を出産しない。
- 1頭あるいは何頭か生まれた後2時間以上も経過するのに次の出産が始まらない。(産み残し)
- 産道に胎児が詰まって出てこないのが確認できる。
- 破水した場合、破水後1~2時間までに出産が始まらない。
- 緑がかった濃いおりものを排出したり出血が見られるのに出産しない。
飼い主ができること
猫は逆子でも異常出産ではありません。逆子で頭が出てこない場合、落ち着いて手伝ってあげる必要があります。
無理に引っ張ると危険です。子猫の体を腹の方へエビのように曲げると出てきます。(お尻を優しく掴んで、くの字に曲げる)
これ以外の難産のケースに関しては、飼い主自身で何かができるということは、ほぼ無いでしょう。危険を回避するためには、動物病院を頼るしかありません。
出産の前から、かかりつけの信頼できる獣医師としっかり相談をしておく必要があります。
- 時間外でも診てもらえる。
- 携帯電話で的確な指示をもらえる。
- 夜間、往診に来てもらえる。
このようなこともお願いしてみましょう。無理な場合は、24時間対応してくれる動物病院を事前に探しておきましょう。
万一の場合に備えて、シミュレーションしておくことは、とても大切です。